【税務の基礎知識(国際税務)】国際的な個人所得税の課税方式
2019/04/18
【国際的な個人所得税の課税方式】
・個人所得税の課税方式
国際的な居住者の個人所得税の課税方式としては、大まかには「全世界所得課税方式」と「国内源泉所得課税方式」という2つの方式があります。
日本を含めた多くの国では「全世界所得課税方式」が採用されていますが、一部の国では「国内源泉所得課税方式」が採用されています。
なお、大まかな分類では上記の2つの課税方式に分類されますが、国ごとに細かな課税方式は異なりますので、諸外国の個人所得税の算定においては現地国の税法を随時確認する必要があります。
・全世界所得課税法方式とは
全世界所得課税方式とは、文字通り、その国の居住者が、その国で稼得した所得のみならず、その国以外の国で稼得した所得も含めて、全ての所得に対して課税を行う方式です。つまり、課税の範囲は居住者が全世界で稼得した所得ということになります。
多くの国が全世界所得課税方式を採用しており、日本もこの方式を採用しています。
他にはアメリカや中国なども全世界所得課税方式を採用しています。
・国内源泉所得課税方式
国内源泉所得課税方式とは、その国の居住者がその国で稼得した所得のみに対して課税を行う方式です。つまり、課税の範囲は居住者がその居住地国で稼得した所得のみということになります。
シンガポールなどが国内源泉所得課税方式を採用しています。
・国際二重課税の排除
全世界所得課税方式を採用している国の居住者が、二国間にまたがり所得を稼得している場合、国際的な二重課税が発生することがあります。
全世界所得課税方式を採用している場合、居住地国以外の国で稼得した所得についても居住地国で課税されますが、この居住地国以外の国で稼得した所得については、居住地国以外でも課税されることがあります。
この場合、「居住地国以外の国で稼得した所得」については二国間で課税がなされることになるため、国際的な二重課税が発生します。
このような二重課税を排除するために「外国税額控除」という制度が設けられており、居住地国での申告の際に外国税額控除制度を適用することで、居住地国以外の国で納付した所得税額を居住地国で納付する所得税から控除することができ、二重課税を排除することができます。
対して、国内源泉所得課税方式を採用している場合には、原則的には国際的な二重課税は発生しません。
なぜなら、そもそも国内源泉所得課税方式を採用している場合には、居住地国以外の国で稼得した所得については、居住地国で課税されないからです。
従って、国内源泉所得課税方式を採用しているシンガポールでは「外国税額控除」制度が存在しません(制度上国際的な二重課税が発生しないため二重課税を排除する制度を作る意味がないため)。
また、二重課税の排除方式としては「免税方式」もあります。
これは租税条約で免税となる所得を規定することで、一定の所得については全世界所得課税方式を採用している国においても課税の範囲から除外することで国際的な二重課税が排除されます。代表的なものとして短期滞在者免税制度などがあります。
まとめると国際的な二重課税の排除の方式としては以下の3つがあります。
①外国税額控除方式
②国内源泉所得課税方式
③免税方式
(ポイント)
・国際的な居住者の個人所得税の課税方式としては、大まかには「全世界所得課税方式」と「国内源泉所得課税方式」という2つの方式がある。
・国際的な二重課税の排除の方式としては、①外国税額控除方式②国内源泉所得課税方式③免税方式がある。